科学と宗教をつなぐかけはし

かけはし

特集 里山マインド 5

カウンセリングには,現実的な考え方や気持ち,意識的な行動に焦点を当て適応を目指す方法と,前回のトピックのような深層心理の働きによって心の癒しや安定を目指す方法があります。

前者の代表が認知行動療法と呼ばれるカウンセリングです。認知(物事のとらえ方や受け止め方)をふり返ったり,対人関係や社会生活のスキルや感情のコントロール法を身につけたりするものですが,会社や学校でも活用されています。

認知行動療法は,新型コロナ対策でもよく聞かれた「エビデンス」という科学的で実証的な方法を重要視します。一般的なストレスマネジメントも同じ方法です。

そしてこれらは,現実生活の「里マインド」を整えるカウンセリングであると私たちは位置づけています。

一方,「深山マインド」は深層心理の働きです。

前回まで紹介した深山マインドのカウンセリングは,夢やイメージ,身体症状や共時的な体験などを扱い,非日常的な対話を通したカウンセリングです。とても主観的でスピリチュアルな宗教性を帯び,科学的な方法には馴染みません。

しかし,両者は相反するものではありません。

科学は単に客観的な観察によって世界を明らかにするものではなく,例えば,重力ひとつにとっても引力でり,空間の歪みであり,と創造性と神秘性に満ちています。ニュートンやアインシュタインといった偉大な科学者達は,神が創造したこの宇宙の神秘を理解しようとしていたと,昔,本で読んだことがありますが,科学と宗教は補い合っており,どちらのパラダイムにも行ったり来たりできる態度によって健全に発展していくのではないでしょうか。

「里マインド」と「深山マインド」のあいだの心である「里山マインド」は,いわば科学的な態度とスピリチュアルな宗教性をつなぐ「かけはし」とも言えるのかもしれません。

つづく