話を聴くことがどうして心のケアになるの?

能登半島地震への心のケアが動き出しています。

TVニュースでも頻繁に報道され,臨床心理士や公認心理師への要請が始まっています。

ところで,心のケアで何をするか想像できますか?

心理カウンセラーは“話を聴く人”ですが,話を聴くことがなぜ心のケアになるのか,疑問に思うことはありませんか?

人の話(表現)を聴くということは,その人の主体性を支えるということ

人は表現をします。

言葉を使った表現に限らず,絵画や音楽,スポーツも自分を表現する手段です。

言葉を使わなくても,しぐさや表情,姿勢で何かを表現していますし,心身の反応もまた表現です。

心理カウンセラーは,そうした表現をその人が意識的・無意識的に関わらず,なんらかの意図をもって活動した主体的なものであると捉えています。

自分らしさを発揮させようとするのも,問題を解決しようとするのも,その人の主体性によって行われる活動です。

その人の主体性が発揮しやすくなるお手伝いが心のケアです。

ストレスは,この主体性を歪めます。

そして,震災や戦争,ハラスメントやいじめといったトラウマティックストレスは,主体性の根幹にダメージを与えるような出来事になるものです。

しかし,どんな出来事であれ,ストレスを受けると心身が反応します。

この反応は表現です。

心の表現,身体の表現です。

その表現が受け止められない状態は,主体性がネグレクトされている状態と同じです。

ショッキングな出来事に遭遇し,それに伴って生じるストレス反応をまずは受け止める。

つまり「聴く」ということは主体性を支えることになるのです。

眠れない日々はとても辛い。

しかし,そうした心身の反応は,「いつ危険が及びかわからないので注意を怠らないように覚醒していようとする主体的な表現」なのかもしれません。

だとすると,「そこに危機に対して注意を怠らないようにしている健康的な側面が確かにあるのだ」ということを忘れないで欲しい。

とはいえ被災地で表現される様々な話を聴くことは容易ではないでしょう。

深い悲しみに耐えられなくなるかもしれません。

強い怒りが向けられるかもしれません。

第三者がその(・・)()()救って(・・・)あげたい(・・・・)という思いから安易に話を傾聴すると,いつか救えないと感じた時に話を聴け(か)なくなってしまう。

話を聴いてもらっていた人は,さらに深いダメージを受けてしまうかもしれません。

話を聴くプロフェッショナルとして,臨床心理士や公認心理師の役割が求められているのは,こうした背景が理由のひとつです。

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