ネガティブ・ケイパビリティと里山マインド

ネガティブケイパビリティ

NHKクローズアップ現代で「ネガティブ・ケイパビリティ」が放映されました。

ネガティブ・ケイパビリティの意味は,帚木蓬生氏の著書では「答えの出ない事態に耐える力」とされていますが,番組では「モヤモヤする力」として紹介されました。

ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)とは

元々,ジョン・キーツという詩人が発見した概念を,ビオンという精神科医が引用して知られるようになった言葉で,「わからないことを認識していながら,答えを急がずそのままわからないこととしておくという,無知にもちこたえておく力」という概念のようです

先の読めないポストコロナの現代において,不確かさの中で事態や状況に持ちこたえ,不思議さや疑いの中にいるこの能力は,それまでにない創造的なアイディアを生み出すのだと考えられていて,ビジネスの中でも注目されてきている概念です。

ネガティブ・ケイパビリティと里山マインド

2月のストレス小噺では,現代ストレスマネジメントのキーワード「resilience(レジリエンス 精神的回復力)」の深い意味について書きました。

沈んだ気持ちを味わいながら,失うことによって変わる自分自身の在り方を考え,気づきを得る過程が本来の回復ということだと書きましたが,これがネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)です。

弊社の心理カウンセリングは,ネガティブ・ケイパビリティを特に大切にしています。

なぜなら心理カウンセリングは,悩んでいる問題に対して「これが答えだ」とか,「この問題にはこの解決方法が役に立つのだ」,あるいは「これをするべきだ」といった答えや方向性が見つからないところから始まるものだからです。

心理カウンセリングには,どちらとはいえない,また,どちらかとされては好ましくない,こっちとあっちの中間のような心の居場所が不可欠なのです。

ウィニコットという精神科医はこれを移行空間と呼び,「移行的」になることができる心の状態を特に大事にしたそうです。移行的である心の状態がネガティブ・ケイパビリティです。

こうした考え方を基に,私は「里山マインド」という言葉をつくりました。

※ 松木邦裕 著 精神分析体験:ビオンの宇宙 2009 岩崎学術出版社 より