横の糸は支援 縦の糸は環境 織りなす布は心のケア

今日はストレスマネジメントの日

毎月11日に東日本大震災後の被災地での心のケアを中心に,ストレスケアの実際についてお伝えする特集です。

もし今,東日本大震災のような大きな災害が生じた場合,あなたの生活する地域や務めている職場や学校での心のケアは,いつ,誰が,何を行うか想像できますか?

今回は,東日本大震災を体験した岩手県沿岸部の学校の心のケアに取り組んだ教育員会の動きについて書いてみたいと思います。

2011年3月11日は金曜日でした。

教育委員会は,週が明けた月曜日にはすでに動き始めました。

県の教職員,大学教授,スクールカウンセラーなど核となる人員によるチームを編成し,支援に向けた環境づくりに着手したそうです。

心理的な問題や支援方法に関する確かな情報提供

阪神淡路大震災を体験している日本には,心のケアに関する様々な知見が蓄積されていました。しかし,被災地には玉石混淆の支援に関する情報や団体が入ってくることが予想されました。

チームは,確かな知見を活用するために情報発信のための環境づくりを行いました。

ストレスに関する知識やストレスケアの方法,子ども達への関わり方,支援の年間スケジュールなど,「オール岩手」として一元的で確かな情報が教職員に届けられるような環境を整えたそうです。

臨床心理士の活用

教育委員会は,被災2か月後の5月から6週間,子ども達や教職員がスクールカウンセラーを活用できる環境をつくりました。

しかし,そのためには100名以上の臨床心理士を確保しなければなりません。

全国の都道府県に招集する必要があり,また滞在施設や交通手段も確保も必要でした。

さらに臨床心理士もこうした事態の支援に関わったことがありませんので,臨床心理士に対する研修機会も必要でした。

平常時ですら難しいこうした環境整備を1カ月あまりの間に行ったのです。

中長期を見据えた支援活動

震災後のストレスは日常的なものではなくトラウマティックなストレスです。

数年後に反応が生じることも考えられますので,中長期に渡りいつでも支援できるような環境づくりが必要でした。

長く一貫したストレスチェックを行う必要もありますし,データを管理できる体制も必要です。

持続的な心のケアをするために様々な環境づくりが必要だったようです。

こうした環境づくりは,トップダウン的でなければ進められない支援です。

当然,現場との軋轢や齟齬もあったでしょう。そうした軋轢や齟齬をリーダーが受け取り,より良い支援方法へと向けていく過程は,簡単なことではなかったのでしょう。

リードする方々の労力や重責は相当なものだったのではないでしょうか。

あるリーダーは,「こうした支援を進めることができたのは,今の学校教育の組織があったからこそではないか」とおっしゃったことが印象に残っています。

この言葉は,学校組織に限ったことではなく,企業や市町村においても組織が心のケアを可能にし,その質にも影響するのだと思います。

メンタルヘルスに関する心身の様子の把握や支援の方法などはわかっている。しかし,いくらそれがわかっていたとしても,それができる環境がなければ心のケアは不可能なのです。

支援の方法が横糸。

支援の環境が縦糸。

その二つの糸を紡ぐとこによって心のケアの布が織りなされるのでしょう。

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