「やさしいのに苦しい」のはなぜ? 母性と父性、グレートマザー心理を考える グレートマザー・シリーズ④

男女

母性と父性を理解することが、グレートマザーからの解放につながる

みなさんは、「母性」や「父性」という言葉を使うことがあるでしょうか。

心理カウンセリングでは、「母性が強すぎる」「この家族には父性が弱い」といった表現を耳にすることがあります。

また、こうした性質は家族だけでなく、組織にも見ることができます。

たとえば、「母性的な上司」「父性機能の弱い会社」などと言われることがあります。

これまで3回に渡り、『グレートマザー』をテーマに以下のコラムを書いてきました。

仲良し家族・空気を読む職場・みんなで頑張る学校に潜む心理的病理 ― グレートマザーとメンタル不調の関係(第1弾)

仲良し家族なのに苦しいのはなぜ? 愛という名のもとに潜むグレートマザー(第2弾)

職場が息苦しい理由とは? 空気を読む文化とメンタル不調の心理構造 ― 組織に潜むグレートマザー心理(第3弾)

グレートマザーの問題から解放されていくためには、母性と父性を理解することが重要になります。

今回は、その理解の入り口として、まず「女性性」と「男性性」という考え方から紹介していきたいと思います。

母性・父性は「男女の役割」の話ではない

まず、大切な前提があります。

心理学でいう「女性性」と「男性性」は、実際の性別とは一致しません。

女性の中にも男性性があり、男性の中にも女性性があります。

母性と父性についても同じです。

多くの方は、「母性は女性のもの」「父性は男性のもの」というイメージを持っているかもしれません。

しかし、実際には、女性が強い父性を発揮することもあれば、男性が深い母性を担うこともあります。

深層心理学では、一人の人間の中に、女性性と男性性、母性と父性の両方が存在していると考えます。

これはとても大切な視点です。

ここを混同してしまうと、家族や個人、さらには会社や学校におけるグレートマザーの問題を、適切に理解できなくなってしまうからです。

心理学でいう「女性性」と「男性性」とは何か?

あなたは、どのような人に「女らしさ」や「男らしさ」を感じるでしょうか。

あるいは、「女らしさ」「男らしさ」という言葉そのものに、違和感や嫌悪感を抱く方もいるかもしれません。

心理カウンセリングの中でも、「女性性」「男性性」という言葉を使うことがあります。

ただし、それは一般的にイメージされる性別役割とは少し異なります。

心理学において女性性とは、「つなぐ力」を持つ性質です。

人と人をつなぎ、包み込み、共に感じ合い、その関係を保とうとする力です。

一方、男性性とは、「切る力」を持つ性質です。

境界を引き、分け、離し、対象を客観的に見る力です。

私たちは、生まれるまで母親とつながった一体の状態にあります。

そこから“切れる”ことで、この世界の中に「わたし」という存在として生まれてきます。

そして、養育者とのつながりの中で育ちながら、少しずつ自分を客観視し、他者と適切な距離を取り、自立へ向かっていきます。

つまり、人が成長していく過程には、「つながる力」と「切る力」の両方が必要なのです。

母性は育てる力、父性は境界をつくる力

母性とは、女性性の「つなぐ力」に、

・育てる

・与える

・満たす

・守る

・維持する

といった働きが加わったものです。

安心感を与え、安全基地となり、生命を支える働きとも言えるでしょう。

赤ちゃんに母乳を与える母親の姿を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。

一方、父性とは、男性性の「切る力」に、

・方向性を示す

・秩序を与える

・境界を引く

・現実を見つめる

・禁止や許可を与える

といった働きが加わったものです。

たとえば、「それはしてはいけない」「ここまでにしよう」と制限を与えることも、父性の大切な働きです。

なぜ「優しいのに苦しい」が起きるのか? グレートマザーの問題

グレートマザーとは、私たちの無意識の深層に存在する、母性的な元型的働きのことです。それは本来…

○ 包み込む

○ 守る

○ 育てる

という、生命を支える重要な力です。しかし同時に…

●呑み込む

●離さない

●成長を止める

という側面も持っています。たとえば…

・「みんな仲良く」

・「空気を読んで」

・「波風を立てないように」

という雰囲気が強すぎると、安心感が生まれる一方で、自分の本音を言えなくなることがあります。

これは、“つながり”を重視する母性が強く働く一方で、

・「違っていても良い」

・「境界を持って良い」

という父性が弱くなっている状態とも考えられます。

過干渉、共依存、ひきこもり、過剰適応、いじめ、パワハラなど、現代のさまざまな心理的問題の背景には、このグレートマザーの負の側面が関係していることがあります。

問題になるのは、母性そのものではありません。

母性が過剰に強まり、そこに父性が働かなくなった時、私たちはグレートマザーの負の側面に巻き込まれてしまうのです。

グレートマザーの問題から解放されるためには、母性と父性のバランスを見つめ直すことが、大切な道しるべになるのではないかと思います。

引き続き、このテーマについて考えていきたいと思います。

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