中高年のための心理学  心理カウンセラーが伝えたい“不安とのつき合い方”①

中高年のための心理学

今月初めの労働安全衛生週間に合わせて、ストレスチェックを実施された職場も多かったと思います。

ところで、厚生労働省版の職業性ストレス簡易調査票には「不安だ」という項目があります。

このチェックで「不安が高い」と出た方、今その不安にどのように向き合っていますか?

「チェックしただけで何もしていない」という方も少なくないかもしれません。

先日、ある方からこんな質問を受けました。

「私は不安を感じると深呼吸をしたり気を紛らわしたりしますが、しばらくするとまた不安になります。

そもそも不安って、どう対処したらいいんでしょうか?」

これはとても大切な疑問です。

なぜなら、不安には日常的なストレスで軽減できるレベルもあれば、薬の助けが必要なレベル、さらに心理カウンセリングで扱うべき深い不安まで、いくつかの段階があるからです。

あなたの不安はどんな不安?

「明日、洗濯物が乾くか不安」

「開業したけれど、お客さんが来てくれるか不安」

「子どもの将来が不安でたまらない」

「人とのコミュニケーションが不安で人間関係がつくれない」

「朝起きると、理由もなく不安に包まれる」

――あなたの不安は、どのようなものですか?

不安は、メンタルヘルスの状態を測るバロメーターともいえる感情です。

不安の背景や意味を丁寧に見つめることが、心の健康を保つ第一歩になります。

不安とは「まだ起きていないこと」に対して生じる自然な感情

「病気になるかもしれない」「失敗するかもしれない」「他人にどう思われるかわからない」――

私たちは誰もが、日常の中で不安を感じます。

不安(anxiety)は、「不確実な未来」や「自分ではコントロールできない状況」、

つまり“まだ起きていないこと”に対する自然な感情といえます。

一方で、不安に似た感情に「恐怖(fear)」があります。

たとえば、クマの出没が相次ぐ地域では、不安というより「恐怖」を感じるでしょう。

暗い道で人影を見たときも同じです。

恐怖は、不安と比べて心身に強い反応を生じさせる感情です。

そしてまた、それを生じさせる対象や未来像がより具体的である感情です。

ストレス反応で考えれば、不安よりも恐怖の方が強いように思われる方が多いかもしれません。

しかし、恐怖はそれを生じさせる対象が明らかな分、不安よりも対処がしやすい感情とも言えるのです。

恐怖よりも取り扱いが難しい“不安”

恐怖は、原因が明確なので対処しやすい感情です。

先のクマと暗い道の例で言えば、「外出しない」「照明をつける」といった行動で軽減できます。

しかし不安は、「将来」「人間関係」「健康」「存在」など、対象が曖昧で、原因を特定できないまま長く続くことが少なくありません。

洗濯物のように自然に解消される不安もあれば、

子どものこと、仕事、人間関係に関する不安は、簡単には消えないものです。

そのため、不安は恐怖よりも厄介な感情といえます。

不安への対処を考えるには、まず自分の不安がどの種類にあたるのかを理解することが大切です。

次回は、不安の種類とその見分け方についてご紹介します。

不安が日常生活や人間関係に影響している方に、心理カウンセリングの視点から役立つ情報をお届けします。

つづく

問い合わせる