原作漫画も人気かと思いますが,今年(令和6年)10月からNHKで土曜23:45~放映されているアニメ『チ。 ―地球の運動について―』を,私は毎週“胸アツ”で観ています。
舞台は架空のヨーロッパの一地方。
天動説が常識として当然視され,これに反する考えは異端として命をもって処罰される世界。そんな中,ただ【真理】を求めるためだけに地動説を証明しようと奔走する人々の群像劇。
それが『チ。』です。
私が『チ。』に“胸アツ”になる理由は,『〖常識〗を単に常識として受け入れることに抗う,挑戦者たちの物語』として観ているからです。
利益は何もない,下手をすれば処罰される。
登場人物たちは,時に〖常識〗に流されそうになったり,自己保身に走りたくなったりします。
しかし最終的には,「地球を動かせ(注1)」と,ただ【真理】を追及したいと希求します。
そんな心性に,私はとても魅かれているのでしょう。
常識を疑い,抗う心と社会構成主義
現代の私たちにとっては,地動説こそが〖常識〗なので天動説を当然視する人々を見ると“何を愚かな”と思うかも知れませんが,よくよく考えれば,その地動説ですら,私達は〔…と言われいることだから〕という,社会常識として受け入れているに過ぎません。
地動説を受け入れているすべての人が,自ら観測してそれを確認しているはずがありません。
私もしていません。
このように,「〔…と言われいることだから〕をただ信じる」観点から見れば,『チ。』で天動説を当然視する人々も,現代人の私達も,大して違いはないようです。
私達が信じる無数の〖常識〗のほとんどは,〔…と言われいることだから〕と,信じているだけなのかも知れません。
ただ,現代社会の多くの人々が当然視している事柄というものは,大抵,疑わなくても問題ないことでしょう。
いちいち疑っていたら,認知の無駄遣いです。
しかし時には,〖常識〗を疑う必要が生じることはあります。
それは,〖常識〗を当然視することで,従来には存在しなかった問題が生じた時です。
私は心理士ですので,社会常識によって,人々の心身に不調が生じるような事態が生じた場合にこのスイッチが入る――つまり,その〖常識〗を疑いたくなるのです。
それは私が,〖常識〗とは,それについて私達がどう語っているかによってつくりあげたもの,〖構成されたもの〗であって,普遍的なものとして信奉するようなものではない,と確信しているからです。
『それについて私達がどう語っているかによって構成されたもの』という考えには,名前がついています。
【社会構成主義】と言います。
イマムラコラムでは,社会構成主義について誰よりもわかりやすく,そして楽しくお伝えし,私たちのWell-beingに繋がる【真理】【心理】についてお届けします。
社会構成主義者の私の〔イマムラコラム〕をお楽しみください!
(注)アニメ『チ。―地球の運動について―』における,地動説を信じる登場人物たち共通の意思を象徴する言葉。
地球が「世界の底」という天動説を信じる当該世界にとって,地球が公転と自転という運動をしているという仮説は,まさに天地逆になるほど奇想天外な論説でしょう。
文:今村亨(イマムラトオル)
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