
今回はがんとの関連でストレスを深掘りしてみたいと思います。
桜満開の週末,がんサポートDrである中村健二氏の講演を聴きました。
医学博士で公認心理師。慶応大学医学部から米国エール大学医学部大学院を修了され,厚生労働省技官として,臨床研究や法制度の面からがん治療に関わり,現在はがん統合医療の第一人者として医療と心の両面からがん患者や家族のサポートケアをプロデュースされているスペシャリストです。
がんとはどういう病気であるのか,現代の治療はどういうものがあるのか,セカンドオピニオンと大切さなどについて,わかりやすくお話しくださいました。
講演の一部,私なりに理解したがんの4つの説をまとめます。
遺伝子説
放射線などの外部からの影響や老化などによって細胞が正常な遺伝子をコピーできず,異常な細胞を作ってしまうようになるという説。
免疫説
体内の異物を排除する免疫細胞のはたらきが上手く機能しなくなり,異常な細胞が増えてしまうという説
代謝説
栄養状態や血流状態が悪く,細胞が低酸素状態になることによってがん細胞が増殖しやすくなるという説
環境・情報説
細胞間のコミュニケーションに使われる物質のうち,悪性度の高い細胞から放出された物質が正常な細胞に悪影響を及ぼしているという説
いずれにしても,がんとは細胞の病気です。
本来,自分の身体を作っていく細胞が,何らかの原因で異物な細胞としてどんどん増えていってしまう病気といえます。
中村先生は,「環境が悪くなった細胞がひねくれて悪い細胞になる」とおっしゃいました。
まるで,家族や周囲から大切にされない子どもが,ひねくれて異端児になってしまうような話です。
私は,「がんと心の関係について」質問をしました。
中村先生によれば,人間には酸素が少なくても生き残る細胞を作る遺伝子があり,酸素が十分行き届かなくなった細胞がそうした細胞を作り,がん化するとも考えられる,とお話されました。そして,ストレスなどによって長期に渡り緊張状態が続くと,酸素が十分届かない細胞が出てきてしまい,そうした細胞がひねくれて,がん細胞を作るようになることもあるのではないか,とのことでした。
ストレスという言葉は,セリエ博士の細胞を使った実験から生まれた言葉ですので,がんの細胞レベルのストレスについての考え方はストレスマネジメントにおいても大変参考になるものです。
また,弊社で提供する動作を使ったストレスマネジメントの考え方に通じます。
私たちは,ストレスとなる出来事を前にすると,身を守ろうとします。また乗り越えようとします。
その時に心身を緊張させるのですが,肩に力を入れ,腰をかがめ,ストレスを感じていない時と違った姿勢で身構えます。
もし,ストレスの緊張が長期に渡れば,歪んだ姿勢のまま固まり,硬くなり,それは当然,細胞レベルまで影響するのでしょう。
歪んだ姿勢によってぎゅうぎゅう押しつけられた細胞たちが,やがてひねくれだすのかもしれません。
ストレスマネジメントに身体を使った心理療法である動作法は大変有効です。
動作法とスポーツや整体などの身体的な活動との違いは,身体の活動と心の活動を相互に関連させ,心身を一体として取り組むという点です。身体の慢性緊張や歪んだ姿勢,ストレスを生じさせやすい身体の使い方などについて,それを生み出した自分の心づかいを身体で整えるのです。
そこには,普段自分ひとりでは決して気づくことができない微細な緊張や姿勢,動作が現れ,無意識的な心づかいを扱うことになります。目に見えない微細な細胞レベルに働きかける心理療法として動作法はマッチしているのではないでしょうか。