金星 木星 金木犀

sirius

心理カウンセリングの支柱を考える

キンモクセイの香りに誘われて散歩に出かけました。映えー,パチリ。

町を歩く人も多く,なんともいい香りに包まれた町中でhealing。毎年のことですが四季のある日本の環境に癒されます。

日が沈み東の空には木星。いつもより輝いているのは,ちょうど満月ならぬ満木だそうです。映えてないけどパチリ。

あと金星の写真がそろえば「金星,木星,金木犀」のオヤジギャグがコンプリートです。

「今度採用しようと思っている社員は金星人にしようと思っているんだよ」。

「金星人? 宇宙人を採用するの…?」

と一瞬思いましたが,もちろん宇宙人ではありません。星占いでの金星人のことです。

これは,バブルの崩壊やリーマンショックなど何度も何度も危機に遭遇し,乗り越えてきた優良企業の社長さんの言葉です。社長さんによれば,ある部署の社員が全員木星人なので気運を高めるために若い金星人の社員がその部署には必要だ,と言うのです。

経営者というものは,社会や経済,政治の動きや資金繰りといった現実的なことだけでなく,占いや芸術といった非現実的なことに対しても関心を向け,それを経営に活かしていることに心底驚きました。

私は,占いや芸術性を日常生活に活かすマインドを深山マインドと呼んでいます。

深山マインドとは,自分ではコントロールできない自我を超えた超越的な働きを体現するマインドです。

一方,現実的な問題や課題について事実やデータを分析し,客観的にしっかり検討しながら自分の意思で方向性を決めていくマインドが里マインドです。

会社の経営だけでなく私たちの人生においても,日常的には里マインドで活動しているのでしょうが,深山マインドをも活かせるようになることで潜在的な可能性が啓かれるようになると考えています。

では,深山マインドを活かすにはどうしたらいいのでしょうか。

How to的な方法があるわけでなく,一人ひとりに独自の探求方法と活かし方があるのだと思いますが,私たちは心理カウンセリングを通して探求していますので,ここでは深山マインドを活かすための心として,信じることと読み取ることについて書いてみようと思います。

「占いを信じますか?」

という質問をした時,その答えは「信じる vs 信じない」という真偽という枠組みに当てはめて答えることになるでしょう。しかし,占星術を経営に活かしている社長さんが「信じているから」という理由で経営に取り入れているのだとしたら,ややもすると他の取締役から「お戯れを」と,止められてしまうでしょう。

「信じる vs 信じない」,「正しい vs 間違っている」の枠組みで占いを受けたり,捉えている人は多いのでしょうが,中には,「信じるとか信じないとかとちょっと違うんだよなあ」という人もいるのではないでしょうか。

私も占いを受けることがありますし,それは日常生活に生きています。しかし,それは「信じている」というのとは少し違います。

心理カウンセリングでも星は重要です。そして,心理カウンセラーは星に対して真偽ではなく,「読み取ろう」という姿勢を持っています。

深層心理を扱う心理カウンセリングに「コンステレーション(constellation)」という言葉があります。これは「星座」という意味ですが,日本の臨床心理学では「布置」と呼ばれています。

コンステレーションは,C.G.ユングの概念ですが,日本には河合隼雄がその考え方を伝えました。

「constellation」は”con(共に)”+”stella(星々)であり,「星々が一緒にいっぱいある」,星座を意味するそうですが,私は,自分の師匠からコンステレーションを読むことが心理カウンセリングの支柱のひとつだと学んでいます。

“夜空の星々は何の脈略もなく散らばっている。しかし,我々は星々の散らばりを単に散らばりとして見るのではなく,そこにパターンを読み取り,そのパターンをオリオン座とか,ふたご座などと呼ぶようになる。深層心理を扱う心理カウンセラーは,こころの問題も星座を読むように扱うのだ。カウンセリングの中で語られる,問題や出来事,関係性や症状,偶然の出会いや環境の変化などは,たとえ論理的な因果関係が説明できなくとも,それぞれはつながり全体的な意味を持つものであるという姿勢でお話を聞ききなさい。星座(問題の全体像)が読み取れた時,不快な体験や症状などの一つひとつは意味や役割として理解でき,それらが単に治さなければならない問題としてではなく,その人の本来の在り方が全体(holistic)として実現するために必要な部分であることに気づき,その結果,真の癒し(heal),治癒が得られるのです”と。

心理的な問題がオリオン座のように誰もがわかるような星座なら全体像が理解できますが,カウンセリングでの多くの問題は,それがどんな星座なのか簡単にはわかりません。だからこそ対話を通して読み取り,クライアントと共に時間をかけて探求していく過程が不可欠なのです。

散歩した翌朝,ベランダに出て南の空の明るい星をスマホで撮影しました。「金星,木星,金木犀! オヤジギャグが全体になった!」と癒されたような気分になったのですが,ネットを調べたら今の季節,金星は明るくなってから出てくるので見えないことがわかりました。

写真は「ミト,シリウスに向かって飛べ!」でお馴染みのオリオン座のシリウスです。偽りの写真を投稿してしまったことを謝罪いたします。申し訳ありませんでした。